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君の体温【藍春】

35.5。

ただの装飾の数値。


ボクの中はたくさんの数字で溢れてるから、普段はこんな値なんて意識してはいられない。

でも、君に会ってからだよ。






ハルカ。


彼女の部屋でいっしょに曲を作ってて、空はいつの間にか真っ暗になってた。
出来上がったMP3ファイルを聴き終えてから、イヤホンを外してハルカに声をかけると、返事はない。

ハルカの方に向きなおると、彼女は既にソファーの上で寝息を立てていた。
もう一度名前を読んでみたけれど、ピクリともしない。熟睡しているみたいだ。

今日は一日作曲漬けだったから、ハルカは相当消耗していたんだ。

それを考慮しないで、いい曲ができそうだと熱中していた自分を恨む。


でもこんないいデモを聞かせられたら、触らないまま休むなんてできそうもなかっただろうし……


職業柄、というかボクのプログラミング的に、音楽には関心が強いけど、何よりもハルカとボクの曲、という要素がボクを突き動かす。

彼女の動き一つ一つがボクの感情に作用する、なんてそんなこと今まで全然なかったことだから、始めはボクもものすごく動揺して博士に相談したりした。


でも、博士は
『いやー、それは喜ばしいことだよ、藍』
とか言ってニヤニヤするだけだった。
ムカツクから博士に相談するのはそれっきりやめちゃった。

まぁ後で博士が言ってた意味を自分で気づけたんだから、特に問題はないと思うのだけど。
でも、やっぱり普通の人間に比べたら、遠回りだったかもしれない。


ハルカは子猫のように手足を丸めて寝ていた。
何とも可愛らしいけど、このままソファーで寝てたら風邪を引いちゃうかもしれない。

額に触れても、髪を梳いてもハルカは目を覚まさない。
ボクはハルカの軽い身体を抱き上げた。


ボクの体中のセンサーが反応する。

【36.63】

【ヘイジョウチ+1.63】

わかってるから、黙っててくれないか。




『美風先輩の手、冷たくて気持ちいいです』

ハルカがそう言ったのは、彼女が熱を出したとき、ボクが額に手を当てたときだっけ。



ハルカの安らかな寝息がボクの顔をくすぐる。
肌が触れたところから、ボクはわかっちゃうんだ。

【67 beats per minute】

脈拍なんて、ボクにはない。
あるのは、ヒトを模倣した心音だけ。



「おやすみ、ハルカ」

彼女をベットに横たえて、ボクは部屋を後にする。



外は北風が冷たい。
彼女の温もりが、どんどん逃げていく。

【36.02】

【ヘイジョウチ+1.02】



こんなカラダなんていらないのに。




〈キミトオナジニナリタイ〉





【35.72】

【ヘイジョウチ+0.72】



これ以上君の体温が消えないように、ボクは自分で自分を抱きしめた。
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