スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

トキ春 卒業

ピクシブに上げてるトキ春小説です。


最後のおはやっほーニュースの収録が終わり、私はまだ泣いている春歌を連れて帰途に着いた。

「……一ノ瀬さん」
 部屋まで送ると、春歌は部屋の奥からとても大きな段ボールとMP3プレーヤーを出してきた。
「……もうHAYATO様からは卒業だから、私もこれを片付けた方がいいでしょうか」
 見上げた目は、まだ赤い。
 段ボールの中身はHAYATOのCD、ライブDVD、写真集etc……
 どれも満面のHAYATOスマイルをキメている自分の顏が写っている。
「なるほど。だから引越しのときに私にこの段ボールを触らせなかったんですね」
 隣に腰掛けると、春歌は少し俯き、こくんと首を振る。
 寮への引越しでお互いの手伝いをしたとき、春歌はこの段ボールを『それだけはダメですっ! 自分でやります』と言ってすぐに隠してしまったのだ。
「どんな恥ずかしいものが入ってるのかと思えば……」
 てっきり春歌の小さい頃の写真とか日記の類いだと思っていたのにまさか自分のものとは。
 春歌は俯きながら、
「一ノ瀬さんはHAYATO様じゃないんだし、卒業したし……なのにパートナーがまだHAYATO様のものたくさん持ってたら嫌かなって思って……」
 そう言って縮こまる春歌が愛しくて、手がのびてしまいそうになる。
「別に嫌ではありませんよ」
 確かにたくさんの自分の写真が一度に並べられているのを見るというのも奇妙なことだが、でもむしろ……
「むしろ嬉しいです」
「へっ?」
 春歌が目を丸くする。
 箱からCDを取り出すと、かなり初期のものの初回限定版や、それの通常版、販売部数が少なかった雑誌、おはやっほーニュースのDVDまであった。
「すごいですね。私の事務所よりも多いかもしれません」
 春歌はHAYATOのデビューシングルを眺めている。
「私が嫌かもしれないと思って悩んでいたなら、私に相談などせずにどこかへやってしまえばよかったではないですか。でもあなたはそれでも捨てられなかった、でしょう?」
「……はい」
「あなたはHAYATOがデビューして早くから、こんなにも私のことを愛してくれていた」
 更に俯く春歌の肩に腕を回す。
「おはやっほーニュース第一回を見てから、ずっと大好きだったんです。友達が少なくて寂しかったけど、HAYATO様の笑顔を見ていれば大丈夫だったんです。だから……」
 また泣き出しそうになる春歌を抱き寄せた。春歌も私に体重を預けてくる。
「大切だから、捨てられないんです……」
 春歌の目から、涙がこぼれる。
「HAYATOをこんなにも愛してくれてありがとう。それに、HAYATOは消えても、それでも私の中に生きていますから」
ーそう、『一ノ瀬トキヤ』の中の『HAYATO』として動いていた時の記憶、感情も積み重なって、それが今の自分になる。
「あなたが私のことを画面越しながらずっと前から愛してくれていたとは、素敵なことではありませんか。それに、私のHAYATOとしての時がなければ、君が早乙女学園に入学して、私と出会うことは無かったでしょう?」
「そう、ですね……」
 春歌が顏を上げる。
 そして何か思いついたように、
「私は、HAYATO様の曲を作る、って夢があって入学して、それが今は一ノ瀬さんの曲を作れる。でも、なんていうか……」
「なんていうか?」
 春歌は少し考えて、
「HAYATO様が一ノ瀬さんだって学園祭の時に言われても、そこまで驚かなかったんです。それは、HAYATO様をテレビで見てるのと同時に一ノ瀬さんと一緒にいて、なんとなく同じものを感じてたというか……」
うーん、上手く言えないです、と春歌は唸る。
「私とHAYATOの歌い方のくせが似ているとも言っていましたね」
「そうなんです。でもそれだけじゃなくて、パートナーとして一緒に課題をやっていたりして、厳しくても私のことをいつも思って下さるところが、HAYATO様がファンのみなさんに対する温かさと同じだなぁと思って」
 そう言う春歌は、とても穏やかな顏をしていた。
 その耳に口を寄せて囁く。今度は本当の私の声音で。「世界でたった一人の私の彼女さん」
「は、はいっ!」
「あなたは今、幸せですか?」
ーどうせ答えはわかっているけれども。
「はい。とっても幸せです!」
ー日だまりのようなあなたの笑顔が見たいのです。
「私も幸せです」
 春歌の柔らかな頬に口付ける。
ーなぜだろう、これから先まだまだ苦難が多いだろうに、あなたと一緒なら無限の可能性を感じるのです。
『世界だって変えられる』気がする。
「ではこの箱は捨てずに取っておきなさい。」
「わかりました」
 段ボールの横に置いてあったMP3プレーヤーを手に取る。
 電源を入れるとたくさんのHAYATOの曲と、BELEAVE MY VOICEの音源が入っていた。
「段ボールは取っておいてもいいですが、このプレーヤーはお預けです」
「えっ……」
 春歌の眉が下がる。
「あなたが聞きたいときには、いつでも歌ってあげますよ。HAYATOの曲もね」
「本当に?」
 今度は笑う。
「えぇ。いつだって生で聞かせてあげます」
「嬉しいです!」
 キラキラ、キラキラ。星屑のような眩しい笑顔を向ける。
関連記事
スポンサーサイト
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。