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トキ春 遥か

トキ春小説第二弾。
「星屑shall we dance?」ネタです。


春歌の部屋で二人で夕食を取っていると、付けっぱなしのテレビから聞き覚えのあるメロディが流れてきた。二人は同時に食事の手を止めて、30秒足らずのCMを緊張した面持ちで見つめる。

 『ハートリング、新発売』

 宣伝文句が流れ、画面が次のCMに切り替わると、トキヤは無意識に止めていた息を吐いた。
「意識的に見たことはありましたが、偶然に見たのは初めてでしたね」
 やはり少しは恥ずかしいもので、トキヤは微妙に目線を春歌から外してそう言った。
「そうですね……急に流れて驚きました。Bメロから流れるとインパクトがありますね」
 春歌も少し顏を赤くしている。

 なんとなく沈黙。

 トキヤは何も言えずに、黙々と目の前の食事に向かう。
 やはり、テレビに自分のものが流れるというのは未だに慣れない。
 HAYATOのときは、HAYATOのキャラクターを演じればいいだけだったから、それは「HAYATOの」もので、「自分の」もの、という感覚はどこか稀薄だった。
 しかし、今回のCMは、全くの自分自身のものであり、何より春歌と共に、紆余曲折あって、大変に苦労して作った曲だから、思い入れもひとしおである。

 トキヤが感慨にふけっていると、春歌が下を向いてつぶやくように、
「……やっぱりかっこいいです、一ノ瀬さんは。イケメン、というよりハンサムというか」
このCMもすごくロマンチックです、と告げる。
 また顏を赤らめる春歌に、目線を合わせられない。
「お姫様にお褒めいただいて光栄ですね」

 またしばし沈黙。
 ……恥ずかしくて顏を見られないなどらしくもない。
 トキヤはしっかりと春歌を見据え、何か言おうと思い、
「このCMではカットされていますが、私はこの曲のAメロも好きなんです」
『遥か 時を越え』
 と、その歌詞を口ずさんだ。その途端、向かいに座っている春歌の顏が耳まで赤く染まる。
「どうしましたか? そんなに顏を赤くして」
覗き込むと、春歌は自分の頬に手を当てて、
「……歌詞が」
やはり目を逸らしてつぶやく。
「その『遥か』って歌詞が、いつも気になっちゃうんです。……自分の名前を呼ばれてるみたいで」
全然意味は違うんですけどね、と語る春歌はとても愛らしい、と純粋に思った。

はるか。
春の歌。
「なるほど。それは気付きませんでした。この歌を聞くたびにそう思っていたのですか? かわいい人ですね」
 躊躇いがちに頷く春歌を見て、思わず笑みが漏れる。自分がこんなにも穏やかな表情をできるのは、春歌の前だけだと強く思う。
「初めて一ノ瀬さんが詩をつけて歌ってくださったときに、ドキッとしちゃって」
「君を思っての歌ですから、それは本望ですけど……そう、確かに『はるか』ですね」
 そう名前を呼んだ途端、二人の目線が合い、トキヤは微笑む。
『春歌』
 また目を逸らそうとするので、もう一度名前を呼ぶと、その度に赤くなる春歌が可愛らしくて、ずっとずっと呼んでいたくなる。

はるか。
春歌。

「いい名前ですね。春の歌。君にぴったりですよ、春歌」
また赤くなる。
「……一ノ瀬さん、その……」
「そんなに私に名前を呼ばれたかったのですか? 君が望むならいくらでも呼んであげますよ、春歌」
「ううっ……」
「そうですね、君がそう言うのでしたらこの曲がCDになったときには、歌詞カードを変えておきましょう、春歌」
 わざと名前を連呼すると、春歌は赤く顏を染めたまま、トキヤを睨み付け、
「……トキヤさん」
 言い終わると更にゆでダコのように真っ赤になった。
 トキヤは、少し遅れてから、柄でもなく自分の顏が赤くなるのを感じる。
「……お返しです」
 少し上目使いでそうつぶやく春歌に、この顏を見られないように。トキヤは急いで目の前のシチューをかっ込み始める。
「い、一ノ瀬さん?」
 驚く春歌をよそに、顏の赤みが取れるのを待つ。
 ……本当にらしくもない。でも、あなたのおかげで、こんな自分も好きになりました。
「あなたも早く食べてしまいなさい。そしたらいっしょにCDでも聞きましょう」
 そして、もう一度私の名前を呼んでください。
 あなたの声で呼ばれると、自分の名前が何十倍も、何百倍も好きになるんです。


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