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piece of rainbow

『ねぇ、お母さん。ぜんぜんできないよ』

『あら、あきらめずに一個一個試してみなさい。きっとどれかが上手くいくはずよ』

小さい頃に持っていたジグソーパズル。
幼児向けのアニメのキャラクターものだったことは覚えているが、どんな絵柄だったかは今ではもう定かではない。


 *
『ホントのお前って一体誰?』

ハッと音也が目を冷ますと、自室のカーテンの隙間から見える外はまだ真っ暗だった。
手探りで枕元の携帯電話を取ると、待受画面のデジタル時計は午前3時を指している。
最近は、学園を卒業してから幾ばくか経ち、音也たちのアイドルとしての働きも少しは板についてきた。
その日はバラエティー番組と雑誌の撮影があり、音也が寮に帰ったのは日付を越えた頃だった。

明日も仕事あるし、今日はちゃんと寝てたいんだけどな……

音也はいやな汗でぐっしょりと重くなったスウェットを脱ぎ、ベッドの上に脱ぎ散らかしていたトレーナーをかぶって再び毛布を被った。

ここ最近、忙しいせいか、よく悪夢を見る。
それはいつも、どんなものか、と聞かれても答えられないような、薄ぼんやりとしたものだった。「何か」に問い詰められるという、恐怖よりも焦燥感が勝る悪夢。

何に焦っているのか、自分で自分がわからない。
夢を見る頻度はだんだんと高くなってきて、ここ数日は、一晩に何回も目が覚めてしまい、ほとんど寝れて。

―『ホントの自分』

あー、寝れない。

さらに悪いことに、音也も春歌も忙しく、壁を隔てて隣の部屋にいるというのに、ここ二週間も春歌に会えていない。
音也がアイドルの階段を上るのと同じくらい、もしかするとそれより早く、春歌は作曲家の道を進んでいる。最近はテレビCMなどの単発の仕事がかなり入ってくるようになり、なにかと打ち合わせなどで部屋を空けることが多かった。


春歌の支えなしには、自分の世界のピースが、内側からバラバラになって崩れてしまいそうだった。

……そろそろ会わないと、俺、ヤバいかもしれない

何でもいいから会いたいよ……

電話を掛けてみようかと思い、ケータイを掴むが、待受画面のアナログ時計に躊躇させられる。

―『ホントの自分』

……やっぱり寝よう。
音也は携帯電話をを放り出して、もう一度毛布をかぶり直した。



―次の朝。
やはりなかなか寝付けず、睡眠不足のまま、現場に向かう。
春歌には、今日もまた「行ってきます」のメールしか送れなかった。

この日の仕事は、今年度早乙女事務所に入ったアイドルの卵(つまり音也、トキヤなど7人)で集まっての特集トーク番組だ。フリートークの他、各人のソロ曲を披露したりする、なかなかに力の入った企画だった。
といっても、この面子で話をすることは特に意識しなくても自然とできることだから、そういう点では楽な仕事の方だったと思う。

「それで、お部屋にたーくさんピヨちゃんを飾っていたら翔ちゃんが……」

「那月、もう俺とピヨちゃんの話はいいから」

「そうですか~? あ、そうだ! 今度出るピヨちゃんのぬいぐるみの新シリーズがですね、」

「お前は少しは人の話を聞け!」

「翔。四ノ宮さんには言っても無駄です。諦めなさい」

「ナツキはいつもピヨちゃんの話をしていますね」

「いやぁ、全くシノミーの天然っぷりにはいつも呆れを通り越して感動させられるよ」

「その意見には多いに同意だな」

自然に進んでいく会話の波。
しかし、音也はその中で妙な違和感を感じ、周りが話すのに合わせて微妙にずれた相づちを打つことしかできなかった。

あれ、俺っていつもカメラの前でどんな感じで話してたっけ。

スタジオにいる自分がどこか遠くに感じられる。

女性リポーターが6人のあまりにも勝手なトークに苦笑しているのを見て、乗じて笑ってみる。

どんな風に、笑ってたっけ。

いつも意識しなくても簡単にできることができない焦燥。

違う、何かが違う。

ピースがバラバラらと落ちていく。


何も喋れないうちに、お題が変わる。
「では、次はみなさんにアイドルになりたいと思った理由をお聞きしたいと思います」

はいっ、と翔が威勢よく手を上げる。
「では、来栖くん」
「俺は、小さい頃に見てたケンカの王子様ってドラマがめっっちゃ好きで、ケン王役の日向先生に憧れて、アイドルになろうと思ったんです」

そう言ってはシュッと空手の突きを空中に繰り出す。

「ケンカの王子様! 私もあのドラマ大好きでした。ケン王の、あのあふれでる男気がかっこいいんですよね」

翔とリポーターの会話に花が咲く。
―『ホントの自分』
また聞こえる。

―『何故ここにいるのさ』……うるさい

収録中も口を開かない音也を、隣の席のトキヤがじっと見つめていた。



*
「じゃあ音也くん、虹色☆OVER DRIVE! の準備してくれる?」

ADの声に顏を上げると、ぼんやりしているうちにフリートークが終わっていた。

「音也、大丈夫か? 今日調子悪そうじゃね? なんか全然しゃべってなかったしな」
横から翔が顏をのぞきこんできた。

翔の青い瞳に自分の顏が映り、音也は翔から目を逸らした。

「え、あぁ、今日ちょっと寝不足で……ありがとね、翔」

笑ってごまかすと、わざわざ音也の横をすり抜けるような足取りでスタジオへと向かうトキヤに、頭をぽんと叩かれた。

「健康管理もアイドルの基礎ですよ。ちゃんと寝なさい」
そう言って音也を睨む。

「わかったわかった、今日はちゃんと寝るよ」

そう言うと、翔はまだ少し不安気な顏を、トキヤは厳しい顔をして、二人は去っていった。

「体調悪いの? それなら曲の収録後に回してもいいけど」

会話を聞いていたADも、声をかけてくる。

「いえ、大丈夫です。いけます」

しゃべれてなかったこと、二人にはわかっちゃったのか……

「そう? じゃあいつもみたいに笑顔でよろしくね」

ADの声に、ふと、春歌の声が聞きたくなった。




虹色☆OVER DRIVEは、春歌と作った大好きな曲なのに、どこか歌詞が上滑りしていった。

「自分らしくあるため」

作ったときは何とも思わず書いた歌詞も、自分で自分に刺さる。

ごめん、春歌の歌なのに、上手く歌えないよ……

音也のマイクを握る手が震えた。
いっそのこと何も考えずに、脊髄反射で歌ってしまおうと思うと、ふと先ほどのトークのお題が頭に浮かぶ。

「アイドルになりたいと思った理由」

自分のものといえば、「父さんと母さんに気づいてもらえるかもしれない」ということ。

そう。父さんと母さん。

でも、それって別にアイドルじゃなくてもいいんじゃなかったのかな。アナウンサーとか、政治家とかでもよかったんじゃないのかな。

翔の「日向龍也に憧れて」とか、トキヤの「本当に歌が歌いたかったから」とか、そういう強く「アイドルに」なりたいという理由が音也にはない。
彼らが瞳を輝かせて理由を語る姿を見ていると、どこか不安になった。

……なんで春歌の歌歌ってるのに、俺こんなにマイナス思考なんだろう

変に冷たい汗が背中を流れ、視界が霞む。
音也の意識の中で、最近取材を受けた雑誌の、インタビュアーの台詞が浮かんできた。


『一十木くんは孤児施設で育ったということだけど、……』

あぁ、そうか。
だから、寝られなくなったのかな、俺。
わかっていたけどさ、でも……

パズルが、崩れる。


頭が急に重くなって視界がまわりだし、音也は吐き気がして舞台上に座り込んだ。

突如その場は騒然とし、ディレクターの指示によりカメラが止まる。
その間に舞台袖から楽器の合間を縫ってやってきたトキヤが音也に肩を貸し、速やかにスタジオから出ていった。


*
「……ヤ、音也」

名前を呼ぶ声に目を開けると、視界に金髪が飛び込んできた。

「あ、起きたな。……やっぱり体調悪かったんじゃねぇか! 無理すんなよな、まったく」

そう説教しつつも、翔は音也のずれた毛布をかけなおす。
音也は自分達の楽屋のソファーに横にされていた。

「睡眠不足で倒れるなんてあり得ないぜ。健康管理もアイドルの基本、ってさっきトキヤも言ってただろ? 言ったそばからこれだもんな。さっきまではあいつがお前を見ててくれたんだぜ」

「うん、ごめん。ありがとうね。後でトキヤにもありがとうって言っとくよ。翔の出番は大丈夫?」

「俺はもう撮ったから気にするなって。それで、ディレクターさんに言われたんだけど、お前の曲は取り直しになるみたいだから」

「そっか……」

音也は軽く頭を振った。
まだ鈍い痛みが残っている。

「まぁまだ呼ばれないだろうし、もうちょい寝てな」
翔がもう一枚毛布を持ってきたので、音也はそれを被って目を閉じた。

「まだ顔青いな。収録終わるまでは、帰るってわけにはいかねーけど、……春歌に連絡しとくか?」

翔がそう言って携帯電話を取り出した途端、音也は毛布をはね除け、翔の手を取った。

「春歌には、電話しないで……」

わがままだとわかっていても、そうせずにはいられなかった。

翔は音也の勢いに目を見開く。そして、何か納得したようにため息をついて、

「お前ってさ、好きな子にカッコ悪いとこ見せられないタイプ?」
「えっ……」
「絶対そうだろ。春歌にぶっ倒れたなんてカッコ悪いとこ見せたくないだけだろ?」
「……そうかも」

でも、それだけじゃない。今この状態で春歌に会ったら、春歌には自分の中身が全て見透かされてしまいそうで。
心が削れて透けてしまった自分の中の最も奥にある痛みを、春歌は受け止めてくれるだろうか。

すると、翔は音也の目をまっすぐに見据え、

「俺もそういうとこあるから気持ちはめちゃくちゃわかるけどさ、そういうのやめた方がいいぜ。最近お前、疲れ溜まってるよ」
「そう見える?」
「ん」
首を立てに振る。

「それに春歌だって、お前のこといつも心配してるだろ。お前の勝手なプライドで黙ってても、春歌が余計気を揉むだけだぜ」
「……」

音也は何も答えられなかった。
翔は苦笑し、

「とりあえず寝てろよ」
音也はため息をついて、再び横になった。


「そういえばこの前翔のお父さんに会ったよ」
微妙な雰囲気を変えようと、寝た格好のまま音也は話題を変えた。

「えっ、マジ? どんなタイミングで?」
「俺が楽屋で取材中に、突然おっさん――シャイニング早乙女が入ってきてさ、『チャーント仕事をしてるか見に来ましたヨヨヨ』とか言って居座ったときに、シャイニングといっしょに翔のお父さんがいたんだ」

翔が、なんだよそれ、と笑う。音也もいっしょに笑った。

「俺の父さん社長のスタイリストやってるからな。でも紹介したこと無いのによくわかったな」

「だって、目のあたりとかめっちゃ翔と似てるんだもん」

そう自分で言って、あぁこの話題もダメだと気づき、音也は何かに打ちのめされ、寝返りをうって横を向く。

「父さんに似てるってのはよく言われんなー。でも背が低いのも割と父さんの遺伝だから、その辺は複雑だな」
苦笑する翔に、痛みにも似た羨みを感じる。

『父さん』『遺伝』。

「まぁ性格的には、薫の方が父さんには似てるか。俺は母親似ってよく言われるからな」
「……」
「バイオリンとかも母親の影響だし。……?」

音也の返事が鈍くなったのに気付いた翔は、ハッとして、

「……わるい」
下を向き、俯いた。

「お前の生まれ、知ってんのにこんな話して……」
「いいよ、こっちこそごめんね、黙っちゃって」

翔とは同い年で、よく遊んだりもしているけれど、一緒にいていつも思うのは、しっかりしているな、ということ。
決めたことはきっちりやるし、責任感も強い。そしてなにより、友達思いで、いろいろと気が回る。
今のシチュエーションで俺が翔だったら、空気読めずに喋り続けちゃうかも。

そんな翔にだから、自分の思いを話してみようと思った。
音也は再び寝返りを打って翔の方を向く。

「俺さ、親がいなくても寂しいって思ったことはみんなが思うよりはなくて……施設のみんなともめっちゃ仲いいし、先生も優しいから、大人数な分むしろ普通の人より楽しいんじゃないかとも思ってたんだ」

翔は黙って聞いている。

「でもさ、親がいないっていうのはそれでもよかったんだけど、自分のルーツが全く探せないってのはキツいなって、ある程度大きくなってから思うようになったんだ」

「……ルーツ?」

「これはお父さんの遺伝って言えるものとか、もっと言うと、俺のものの考え方のベースっていうか」

昔から抱えていた思いでも、改めて言葉に表すと、すんなり自分に戻ってくるようで、音也の口調は熱を帯びる。

「例えばさ、……翔はいっつも、日向先生に憧れてアイドルになりたいって言ってるけど、」
音也は収録のときに思ったことを翔に尋ねてみた。
「へっ、何だよ、急に話変わるな」

それでも気にせずに音也は続ける。

「ケン王に憧れたって心がアイドルになりたいっていう思考に繋がったのは、やっぱり家族が芸能界にいたから、アイドルが身近に感じられたってのがあると思うんだ」

「まぁ、そうとも言えるけど……でも、それって別に家族からの影響じゃなくてもいいんじゃねーか? 血が繋がってなくても影響されることくらいあるだろ」

「それはそうだけど……でも、世界で一番考え方が似てる人ってやっぱり家族だと思うんだよね」

天涯孤独の身。
施設にいても全然寂しくなんてないというのは強がりではないけれど、この世で血が繋がってる人を知らないっていうのはやっぱり辛い。

「俺には、父さんも母さんもいないんだ。母さんの記憶なんてほとんどないに近いし」
翔は押し黙る。
前に翔にも話したことがあったけれど、この話をすると、大抵の人が何も言わなくなる。


音也は小刻みに震える手を握り込む。
「……そしたらさ、この前雑誌の取材だって聞いて行ったら、ある番組の企画を聞かされてさ、」

結局そう話す声が震えてしまった。
もうこの件は乗り越えたつもりだったけど、自分の中ではちっとも消火されずに残っていたのだと気づく。

『一十木くんは孤児施設で育ったということだけど、……』

「どっからか、俺が孤児だってことがわかったらしくてさ。『あなたの本当のご両親を探してみませんか』だってさ」

翔がハッと顔を上げる。


『最近テレビの露出も増えて、世間に大分認知されるようになってきてるし。一十木くんにも、ここで一発知名度上げるいい機会だと思うんだけど』
そう語る番組ディレクターは目を輝かせていて。

お父さんに、お母さんに会わせてあげるわよ。
あなた、可哀想なんだから。

「めちゃくちゃ腹が立ってディレクターに向かって切れそうになったけどさ、」

仕事だからと割り切ってカメラの前でさらけ出した自分の過去が、お涙頂戴のドキュメンタリーに書き換えられる。それを耐える見返りに、知名度を得るだって?

「俺の母親は飛行機事故で死んだんだし、父親は生まれたときからいなかったんです。俺の家族は施設のみんなだけです」

何度もそう言おうとしたけど、できなかった。

「駆け出しアイドルだから仕事は断れないってのもあったけど、本当はやっぱり俺自身が父親に会いたいって思ってるから断れないのかも、とか思って頭がぐるぐるしちゃったんだよね」

「それは……、」
翔の眉間にしわが寄る。

「……結局断ったんだよな?」
険しい顔で尋ねる翔を見て、音也の震えは少し収まった。

「うん。っていうか、俺が返事ができなくって固まってるうちに、おっさんがバリーンって窓ガラス割って入ってきたんだ。それで、『仕事の話は必ず事務所を通してからだ』ってかなりマジな感じで言ってさ、そのテレビ局の人はびびって帰っちゃったんだ」

「そっか。なら良かった……」
「ごめん、なんか嫌な話して」
「いや、お前と腹割って話せて良かったよ。……同い年なんだし、これからも色々大変でも俺様になんでも相談しろよ」

そう言ってニカッと笑う翔はかっこよくて。
「うん。お互い頑張ろうな」

音也も素直に微笑んで、翔と拳を合わせた。



*
音也のソロ曲の撮り直しも無事に終わり、今回の企画は終了した。まだそれほど遅い時間ではなかったが、音也の体調も鑑みて、一同はそこそこに帰途に着いた。


音也が寮の自宅のドアを開けると、家主が不在にも関わらず室内には明かりが灯っていた。
不思議に思って家に上がると、食欲をそそる香りが漂う。

音也がリビングの方へ向かうと、そこには明かりをつけたまま食卓に突っ伏して眠っている春歌がいた。
彼女の横には、大きなカレーの鍋がある。

テーブルに頬をあてて眠る春歌は、音也が部屋に入ってきたことにも気づかない。

カーテンが引かれ既に闇に包まれた部屋の中で、オレンジ色の電球に暖かく照らされた春歌の姿は、まるで夢の中の風景の一つの様に感じられた。

音也は無意識のうちに春歌の髪に触れる。
かすかに香るシャンプーの香りに、春歌に会えたという実感が伴って、涙が出そうなのを必死に耐える。

「春歌」
声をかけても、彼女はむずるだけで。

「春歌、春歌」
堪えきれずに覆い被さるように抱きつくと、春歌はその睫毛を震わせて、ゆっくりと目を開けた。


「あ、……音也くん」
寝起きのためか、ふにゃりとした笑顔を向ける。
「ただいま」
抱きついたままそう答えると、
「おかえりなさい」
春歌からも抱きしめ返してくる。

幸せが溢れだして、心に染み入っていくような気がした。

「音也くんが帰ってくるって聞いて、たくさんカレー作ったんだよ。あ、でも具合悪かったらお粥もあるけど」

「え、誰から聞いたの、それ」
「一ノ瀬さんからメールが来て」
「……何それ」
せがんでそのメールの文面を見せてもらうと、

『今日の撮影で音也が貧血らしき症状で倒れました。どうやら睡眠不足のようです。今撮影が終わりましたので、一時間ほどで寮に帰るはずです。たまには会ってやってくださると助かります』


「トキヤ……」

先ほど翔に言われたことを思い出す。
『俺もそういうとこあるから気持ちはめちゃくちゃわかるけどさ、そういうのやめた方がいいぜ』

無意識に、笑みが浮かんだ。

俺の世界は、いろんな人に支えられてできてるのかな。

ADさん。ディレクターさん。翔、トキヤ、力強い仲間。同時にライバル。
そして、何よりも大切な人。

ピースが一つずつ、もとある場所に帰っていく気がした。


「そうだ、さっき音也くん宛に小包が来たよ。居留守使うのもなんだから、受け取っちゃった」

そういって春歌が持ってきた包は、音也の施設からのものだった。
開けると、中にはジグソーパズルが入っていた。

『倉庫の中から出てきたものです。名前が入ってたので、ここに入るときに音也が持ってきたものかな?
とりあえず送っておきます。からだに気を付けて、仕事頑張ってね。施設みんなで応援してます』

「古いパズルだね・・・。なんかのキャラクター?」
春歌がピースを手に取って眺める。

「うん・・・・・・
 小さいころに、母さんに買ってもらったんだ」

幼いころはあれほど難しかったパズルも、今では一瞬で完成してしまう。
それでも、ピース一つ一つを大切に手に取っていく。

「わー、虹の滑り台ですね」
「うん」


ねぇ、お母さん。
俺、作れるようになったよ。
パズルも、俺の世界も。
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